2008年3月30日

唯川恵「肩ごしの恋人」を読む

幼なじみのるり子と萌。

るり子の3回目の結婚式で話が始まり,萌が隣り合わせたエビ嫌いの男といきなりホテルへ行くのに,おやおやと思う。時期を外したトレンディードラマかと軽くあきれながら読み進めると,中盤あたりから様相が変り始める。

最初は男を食い物にすることしか考えていないように見えたるり子が,気持ちいいほどまっすぐで一本筋道の通った生き方に見えてくる。反対にまともなキャリアウーマン風に見えた萌の方が,世界中の苦労をひとりでしょいこんだ泥沼の人かと,複雑な思い。

そして,終り近くで出てくるうさぎのエピソード。女が女に惚れる瞬間…読む側もつられて惚れずにいられない。最終的には二人ともとんでもない状況に追い込まれているのだけれど,胸のつかえがおりてまわりはなぜか不思議な明るさに満ちている。

最後のページで萌がるり子に発する意外な一言が暖かくもおかしい。