絵空事の快感。
首相暗殺にまきこまれた男の物語がケネディ暗殺とダブらせながら描かれる。通奏低音のように流れるのはビートルズの「Golden Slumbers」。ポール・マッカートニーの名前がこんなに出てくるミステリも珍しい。
何人かの人物の視点と時間を自由にあやつり,あちこちにばらまかれた伏線が次々に収束する様が圧巻で,エピローグにあたる部分では,フィニッシュの決め方のうまさに,もうほとんど「ポップな号泣」。
小説を読んでこれほど幸せな時間をすごしたのは何年ぶりか。
軽いし,現実離れしているんだけれど,そういう世界にしかない感動というものもある。登場人物の口癖を借りて「伊坂,おまえはロックだよ」と言わずにいられない。