2022年1月7日

「ザ・ビートルズ:Get Back」を見る

'21年、ピーター・ジャクソン監督。

1969年1月、ビートルズがスタジオで新曲14曲を仕上げて最終日にテレビの特番ライブをする、その様子をリハーサルからすべて撮影するという企画。オーバーダビングなしで、ライブバンドとしての原点に帰る。

が、想定外の出来事が続いて計画が狂っていく…。

'70年に映画「レット・イット・ビー」として1時間ちょっとにまとめられたものと元の素材は同じなのに受ける印象は全然違う。今回のは8時間の長尺で、会話や空気感がたっぷり描かれていることもあるのかも。色鮮やかな画面とはっきりした音も驚き。

カレンダーに一日ごとにバツ印がつけられるグラフィックが時間軸をはっきりさせるのがよい。見る側は屋上ライブへの期待とともにどんどん気持ちが高ぶって来る仕組みにもなっている。

印象に残る場面いろいろ。

ジョージは静かにプッツンして一時的に脱退。花瓶の中の隠しマイク。存在感がユーモラスなロードマネージャーのマル・エヴァンス(数年後の悲劇を思うと…)。ちょこっと挨拶に来たピーター・セラーズ。おとなしい家猫みたいな小野洋子と書道とスクリーム(音楽?)。恥ずかしがるリンダ。カラフルなファッション。床の上のパンの皿。偶然参加のビリー・プレストンのプロフェッショナルぶり。いつもやる気満々のポール。しゃべらないリンゴ。だまされやすいジョン。アレン・クラインの噂。生真面目な若い警官。「重量オーバー」の中年の警官。

そんなものが重なり合って屋上ライブは涙もの。「Get Back」の最後、ポールのアドリブ(また君は屋上で遊んだな ダメだ ママは怒ってる 逮捕させる)で感動のピークが来る。すべてがつながる奇跡。ジョンの有名なジョーク「オーディションに通るかな?」でライブが終わる。

この時点では解散するとはみんな思っていなかったんだなーというのがわかる。明るくておかしくて悲しい。

アルバム「Let It Be」がフィル・スペクターのプロデュースでアレなこともあって(方向間違ってるけどスゴいので困る)、この一件はうるうるしながら永遠に悩み続けそう。