重苦しい話が軽やかな文体でつづられるのが何とも奇妙な感覚。
章ごとに変わる語り手によって少しずつ明らかになる真実とは…。作者の目はけっこう意地が悪い。それがここでは良い方に作用する。
教育や少年犯罪をモチーフにしながらも、すみからすみまで伏線が張られて、それが次々に炸裂。とびきりのサービス精神がミステリ好きを歓喜させる。
最終章の冒頭の皮肉っぽいテイストなんてワタシのツボを突きすぎるので(心の中で)フッフッフッと笑わずにいられない。荒唐無稽とさえ映る展開も、語り手がまじえたかもしれない嘘に紛れてまるで藪の中。
疑い深い読者はああでもないこうでもないと首をひねり続けることになる。傑作。