2009年7月31日
雑誌「あるじゃん」9月号を見る
投資信託の年? 今年のはじめに投資信託の入門書の本文カットを描いたのに続いて,今度はお金の雑誌の投資信託の記事のイラストを描く。
投資信託にほとんど興味がなくても,こんなことやってると門前の小僧で何となくわかったような気にもなる。でもほんとは何もわかっていないかも。
調子に乗ってドーンと資金を注ぎ込みたいところながら時節柄そんな余裕もなく,1万,2万みたいな少額でちびちびと買ってしまったワタシは小心者のミーハー。
為替や株や世界の経済情勢を調べてみる。今は何か中途半端なところで,上にも下にも行かないかなー。でも,マーケットは強気な人の方が多いようで,その気合(思い込み)でしばらくはちょっと上向き?
God only knows...
2009年7月27日
綿矢りさ「夢を与える」を読む
国民的アイドル夕子の栄光と転落。文章はどことなくざらついて,その一方淡々として冷徹とさえ感じられる描き方。ヒロインと作者を重ね合わせて見てしまうために,ありきたりのストーリーがとんでもないエネルギーを産むのがおもしろい。
いや,それとも,作者名とは関係なく本当にすごい小説なのか…判断がつかない。
タイトルにもなっている「夢を与える」というテーマは文章の中に何回か出てきて,確かにその部分はわかりやすいんだけれど,それ以外のつかめそうでつかめない何かがいつまでも気になったりする。
救いがないように見えるラストもなぜか嫌いではない。
古風なアイドル然とした作者が心の奥に秘めた狂気を豪腕で放った場外ホームラン(ファウルかも)だとも感じられ,図らずも二重三重にサプライズがしかけられた格好。ワタシはとても楽しめました。
いや,それとも,作者名とは関係なく本当にすごい小説なのか…判断がつかない。
タイトルにもなっている「夢を与える」というテーマは文章の中に何回か出てきて,確かにその部分はわかりやすいんだけれど,それ以外のつかめそうでつかめない何かがいつまでも気になったりする。
救いがないように見えるラストもなぜか嫌いではない。
古風なアイドル然とした作者が心の奥に秘めた狂気を豪腕で放った場外ホームラン(ファウルかも)だとも感じられ,図らずも二重三重にサプライズがしかけられた格好。ワタシはとても楽しめました。
2009年7月19日
奥田英朗「家日和」を読む
いつだったか,図書館で近所の主婦O某と短い立ち話をした。奥田英朗の本がおもしろかったのでまた別の本を借りた,みたいなことを言うので,「最悪」がものすごくよかったとワタシのお気に入りを挙げたりしたものだけど,その一,二週間後,O某からうちの奥様にメールが来て,「『最悪』は最悪でした」。ほめてる? けなしてる?
それはともかく。今回図書館で「家日和」を借りる時,今度はO某のダンナさんとばったり会う。「それ読みましたわ」と言う。うちの奥様も少し前奥田英朗ばかり読んでいた時期があったし…。何でみんな奥田英朗ばかり読んでるんだ?
で,家庭の事情もいろいろな(?)この短編集。軽くおもしろい話がいっぱい。
第二話「ここが青山」…会社が倒産して主夫になったお父さんの周りとのズレのおかしさ。うちの環境と何となく似ているところもある…。でもワタシはこれほどきちんとした主夫はできないなー。
第三話「家においでよ」…妻と別居中にインテリア・オーディオ・ホームシアターに金をつぎこみ「男の隠れ家」を作り上げる男。いいなとは思うけれどそれほど凝り性ではないワタシの目に留まったのは,たとえばこういう個所。
「今度持ってくるから聴かせろよ。ユーリズミックスとか,ニュー・オーダーとか」
「おっ。おまえ,そっちの趣味か」
他にトーキング・ヘッズ,ドナルド・フェイゲン,スクリッティ・ポリッティの名も出てくる。アルバムをちゃんと聞いたことがなくてもこの空気感は伝わる。あの頃友達がほめてたスティーリー・ダン「彩(エイジャ)」をいまだに通して聞いてないなーなどと,どうでもいいことを思い出したりする。そんなところに食いつく話ではないんだけど。
男の隠れ家がヒートアップしてどうなるのかと思っていると,いつもながら絶妙な結末が用意されて鼻の奥がつんとする。ほほえましく温かい。「遊びに行ってもいい?」と訊くその人物が若い頃に帰ったように頬をピンクに染める場面を思い浮かべる。この本の中で一番好きな話。
第五話「夫とカーテン」…転職ばかりする夫とイラストレーター妻。個人的に問題作。同業者としてはわかりすぎる世界だから。みんな同じようなことをして,同じような思いをしてる?
第六話「妻と玄米御飯」…ロハスに凝る妻とその周辺の人々に対する売れっ子作家の夫の複雑な視線。読みながらちょっと困る。実践はしないけど心情的には「ロハス」側に共感してしまうので足元が定まらない(ずっと前,冗談半分に「菜食主義にしたいなー」と言ったら,うちの奥様に「うちはビンボーだからダメ!」と門前払いだった)。この話の主人公は小説のアイデアに困って(たぶん)やってはいけないことをやってしまうが…。これもラストはささやかな感動の涙。最後の決めのポーズのようなものが巧みなんだなと思う。
それはともかく。今回図書館で「家日和」を借りる時,今度はO某のダンナさんとばったり会う。「それ読みましたわ」と言う。うちの奥様も少し前奥田英朗ばかり読んでいた時期があったし…。何でみんな奥田英朗ばかり読んでるんだ?
で,家庭の事情もいろいろな(?)この短編集。軽くおもしろい話がいっぱい。
第二話「ここが青山」…会社が倒産して主夫になったお父さんの周りとのズレのおかしさ。うちの環境と何となく似ているところもある…。でもワタシはこれほどきちんとした主夫はできないなー。
第三話「家においでよ」…妻と別居中にインテリア・オーディオ・ホームシアターに金をつぎこみ「男の隠れ家」を作り上げる男。いいなとは思うけれどそれほど凝り性ではないワタシの目に留まったのは,たとえばこういう個所。
「今度持ってくるから聴かせろよ。ユーリズミックスとか,ニュー・オーダーとか」
「おっ。おまえ,そっちの趣味か」
他にトーキング・ヘッズ,ドナルド・フェイゲン,スクリッティ・ポリッティの名も出てくる。アルバムをちゃんと聞いたことがなくてもこの空気感は伝わる。あの頃友達がほめてたスティーリー・ダン「彩(エイジャ)」をいまだに通して聞いてないなーなどと,どうでもいいことを思い出したりする。そんなところに食いつく話ではないんだけど。
男の隠れ家がヒートアップしてどうなるのかと思っていると,いつもながら絶妙な結末が用意されて鼻の奥がつんとする。ほほえましく温かい。「遊びに行ってもいい?」と訊くその人物が若い頃に帰ったように頬をピンクに染める場面を思い浮かべる。この本の中で一番好きな話。
第五話「夫とカーテン」…転職ばかりする夫とイラストレーター妻。個人的に問題作。同業者としてはわかりすぎる世界だから。みんな同じようなことをして,同じような思いをしてる?
第六話「妻と玄米御飯」…ロハスに凝る妻とその周辺の人々に対する売れっ子作家の夫の複雑な視線。読みながらちょっと困る。実践はしないけど心情的には「ロハス」側に共感してしまうので足元が定まらない(ずっと前,冗談半分に「菜食主義にしたいなー」と言ったら,うちの奥様に「うちはビンボーだからダメ!」と門前払いだった)。この話の主人公は小説のアイデアに困って(たぶん)やってはいけないことをやってしまうが…。これもラストはささやかな感動の涙。最後の決めのポーズのようなものが巧みなんだなと思う。
2009年7月12日
「花とアリス」を見る
'04年,岩井俊二監督。
少女二人ののんびりした日常会話で始まる。さりげなくバックの駅名が昭和漫画ネタになっていたりするあたりから少しずつ作り物のもう一つの現実世界へ迷い込むことになる。
花(鈴木杏)があこがれの男の子(郭智博)をだまして記憶喪失だと思い込ませ,無理につきあうという無茶な話。親友のアリス(蒼井優)がそれに巻き込まれて…。
あちこちにちりばめられた脱力系の笑いがツボをつく。「ナメクジ」の個所はかなり好き。
撮影,特に光の使い方が美しい。耽美主義的な画面が少女たちの世界(必ずしも楽しいことばかりではないと描かれる)とうまく溶け合って,岩井俊二のこの系統の作品にはやられっぱなし。
アリスが男の子とデートした時,スイーツを食べる前に見せる演技したスマイルが最高で,こんな風にだまされるのもいいかなと思ってしまう,ばかなワタシ。
映像美という点では花の泣き顔の大写しの場面だけど,アリスの長いバレエシーンは意味もわからず泣ける感じ。見ることの快感をつきつめている。
見終わってからうちの奥様が「ロリコンのおじさんが好きそうな…」と,みもふたもないことを言う。そういう次元の話じゃないだろうと思いつつも,全否定できない部分もあり,ちょっとつらい…(?)。
少女二人ののんびりした日常会話で始まる。さりげなくバックの駅名が昭和漫画ネタになっていたりするあたりから少しずつ作り物のもう一つの現実世界へ迷い込むことになる。
花(鈴木杏)があこがれの男の子(郭智博)をだまして記憶喪失だと思い込ませ,無理につきあうという無茶な話。親友のアリス(蒼井優)がそれに巻き込まれて…。
あちこちにちりばめられた脱力系の笑いがツボをつく。「ナメクジ」の個所はかなり好き。
撮影,特に光の使い方が美しい。耽美主義的な画面が少女たちの世界(必ずしも楽しいことばかりではないと描かれる)とうまく溶け合って,岩井俊二のこの系統の作品にはやられっぱなし。
アリスが男の子とデートした時,スイーツを食べる前に見せる演技したスマイルが最高で,こんな風にだまされるのもいいかなと思ってしまう,ばかなワタシ。
映像美という点では花の泣き顔の大写しの場面だけど,アリスの長いバレエシーンは意味もわからず泣ける感じ。見ることの快感をつきつめている。
見終わってからうちの奥様が「ロリコンのおじさんが好きそうな…」と,みもふたもないことを言う。そういう次元の話じゃないだろうと思いつつも,全否定できない部分もあり,ちょっとつらい…(?)。
逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」を読む
暗殺の思いがけない展開で幕を開け,それに続く断片的な謎めいた挿話。記憶喪失の男として読者の前に現れた主人公と個性的な登場人物たち(みんな異様に濃い)が物語をダイナミックに引っ張って行く。
個人的には,記憶喪失の周辺の,古いフランスミステリにあったような軽みのある味わいが好きで,実際後半では見事な大技を決めてくれる(ウヘーとうなる)のだけれど,作者の力点はそことは違っているのがビミョーなところ。
ラストでこれでもかとばかりにたたみかけられる事件の核心のエネルギーには圧倒されるものの,情念や組織の話になると何だか…。途中でやめられなくなるくらいおもしろいので,傑作は傑作。
これはあくまでもドロドロしたものが苦手というワタシの好みの問題。
この一冊で完結はしているけれど続編「幻の翼」以下全五冊のシリーズになっている。この水準が持続するのならやっぱり最後まで読むべきか…。
個人的には,記憶喪失の周辺の,古いフランスミステリにあったような軽みのある味わいが好きで,実際後半では見事な大技を決めてくれる(ウヘーとうなる)のだけれど,作者の力点はそことは違っているのがビミョーなところ。
ラストでこれでもかとばかりにたたみかけられる事件の核心のエネルギーには圧倒されるものの,情念や組織の話になると何だか…。途中でやめられなくなるくらいおもしろいので,傑作は傑作。
これはあくまでもドロドロしたものが苦手というワタシの好みの問題。
この一冊で完結はしているけれど続編「幻の翼」以下全五冊のシリーズになっている。この水準が持続するのならやっぱり最後まで読むべきか…。
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