2009年10月20日

加藤和彦のことを考えながらぼーっとする

クロックムッシュとビールで軽く昼食,みたいな記事を見たのはいつだったか…。たぶん何かの雑誌広告,加藤和彦と安井かずみがいつもながらの粋な感じで写っていた。確かそれでグリエールチーズというものの存在を知ったと思う。若かったワタシはその後しばらくクロックムッシュ(作り方はいい加減)ばっかり作って食べたりしていた。クロックムッシュと聞くと今も加藤和彦を思い出す。

 結婚する前のうちの奥様がある時,加藤和彦の古いLP「スーパー・ガス」を持って来て,何曲かかけた。その中の1曲について彼女は何かひとことふたこと言ったと思うけれど,何を言ったのだったか…。アコースティックギターを弾きながら歌われるその「不思議な日」は,その時初めて聞く曲で,静かなトーンなのに強い印象を残した。

加藤和彦の80年代前半のソロアルバムが好き。「うたかたのオペラ」「ベル・エキセントリック」の濃厚&レトロな人工美の極致。「あの頃,マリー・ローランサン」のしゃれた都市感覚。「ヴェネツィア」の明と暗(または重みと軽み)の頽廃。それに加えて金子國義のカバーアートの強烈な存在感。一般受けするものではなかったかもしれないけれど,まぎれもなく一つのピークだった。

同じことは二度とやらない,いつも120点のものを作る,という方針を貫くのはたいへんだったろうなと想像する。5,6年ならまだしも,デビューして40年以上となるとなおさら。才能はいつかすり減るもの。いざその時が来てごまかすことができなかったのかと思ったりする。あんまりな幕引きにここ一日二日力が入らない…。

加藤和彦の音楽を全部は聞いていないけれど,意味もなくベスト3曲を選んでみる。
「ニューヨーク・コンフィデンシャル」
「タイムマシンにおねがい」
「シンガプーラ」