2011年4月15日

「サマータイムマシン・ブルース」を見る

'05年,本広克行監督。

世の中にタイムトラベルをテーマにした物語はたくさんあって,佳作傑作が目白押し,どれも楽しくて,この一品というのが選べないけれど,ヨーロッパ企画の舞台劇を元にしたこの映画の情けないおかしさはちょっと他に見当たらない。

タイムマシンが突如として現れた驚きより壊れたクーラーのリモコンを取り戻すことの方が重要なSF研究会のメンバーたち。学生のノリそのままのようなギャグ(?)はあまり笑えないものの,時間のパラドックスの問題をきちんと押さえつつ,「こいつら,どんだけアホなんだ」とあきれる話の展開に,見ている方は退屈する暇もなく最後まで持って行かれる。

あまりに暑苦しい男たちの間で存在感が薄く見えた上野樹里も,終りの方ではしっかりまぶたの裏に焼き付くようかわいく撮られている。それが,ポップでしっとりした色あいの香川の空気とともに,じわじわ効いてくる。

普通に見た1回めは伏線を見落としがち。DVDの,監督と脚本家のコメンタリーつきバージョンで見直すとディテールがあらためてわかって,感心することしきり。