2011年6月4日

「早川良雄ポスター展」を見る

国立国際美術館。画集や原画展で何度となく見て来たのでポスター展はそれほど期待していなかったのだけれど。

絵としてではなく,最終完成形のポスターとしてあらためて見直すと,時代の空気みたいなものが濃厚に出てくるのがおもしろい。

ヘッドコピーとボディコピー全部に斜体をかけた伊奈製陶のポスター(デザイン担当は不明)など,文字送りを詰めすぎていて,曲芸みたいな風情。今の目から見るとエネルギーの使い方を間違ってる。文章の方はいたってまじめな内容で,その落差が想定外のおかしみを生む。作られた80年代にははやりのデザインだったものが時間の経過とともに時代感覚とずれて,それゆえに新しい価値が出てくる不思議。

ふんわりした色にだまされそうになるけれど,絵の描き方は相当変。緑で鼻を塗って鼻の穴は赤。過激派。大きな画面で見ると筆の物理的な速さもはっきり想像されて,早川良雄の絵の力の秘密を再認識したような気がする。それが今日の収穫。

ひとつだけ残念なのは,大好きな京阪百貨店のポスターがなかったこと。