2009年5月1日

「8人の女たち」を見る

'02年,フランソワ・オゾン監督。

雪に閉じ込められた屋敷で起る殺人…と聞くといかにも古典的謎解きミステリだけれど,フランス風にひねったオトナの味わいになっている。元になったのがロベール・トマの舞台劇だと後から知ってやっぱりなと納得する。

8人の女優の演技合戦。早口の台詞でこれでもかというくらいにくるくる状況が変わって行く。一時も話が一つの所にとどまらない。たぶん作者が意識的にやっている,いわば高踏ギャグ。表面上は女同士の醜い争いだけれど生真面目に受け取っては野暮というもの。

突然挿入されるミュージカル的場面のギャップがおかしい。一家の主が殺されて犯人はこの家の中の誰かかと全員疑心暗鬼なのに,愛がどうしたこうしたと唐突に歌い出すのは絶対変だろう…。おとぼけにも程がある。好き,好き。

最後に真相が明らかになる場面もきちんと名探偵(もどきだけど)の役どころを配してミステリファン心理をくすぐる。結末はこの話の構成だとこうでなければ収まらないと思われる。うまく作ってある。

背筋をぴんとのばした女優たちの立ち居振る舞いがどれもエレガント。色分けされた各人の服装もおもしろいセンス。どこを切り取っても何か気になるものが出てくる。異色作にして秀作。