2009年5月10日

「五月のミル」を見る

'89年,ルイ・マル監督。

一緒に住んでいた老母が亡くなって長男ミル(ミシェル・ピコリ)のところに親族が駆けつける。美しい自然に囲まれた屋敷。時は1968年,フランス五月革命のニュースを聞きながら,遺体の横で遺産相続の言い争いが始まったりする。それと同時に各々の性愛の思惑も入り乱れ,描き方がさりげなくもくっきりしていて,笑ってしまう。ほんのちょっとした視線の動き,表情の変化がおもしろい。

まともに撮ると深刻でどぎついものになりかねない人間ドラマなのに喜劇っぽい雰囲気が漂うのは監督の腕か。オブラートに包んだブラックユーモアみたいなところが好み。

一番おかしかったのは野外でみんなわいわい言いたいことを言ううちなぜかマリファナの回しのみが始まるところ。ついさっきまで五月革命の学生やストを非難していた「ブルジョワ」たちがなんでそーなるの?

手から手へ移るマリファナが一瞬とんでもないことに…。詳しくは書かないけれど,その中で出てくる或る場面のリズムが良くて,ニヤニヤ笑いが止まらない。この映画と波長が合ったということなんだろう。

はじめから終わりまでところどころで意味もなく出てきてはマイペースでうろうろする黒猫というのもいる。何なのか…。楽しんで作っている感じが伝わってきて,なごむ。